IPOに失敗したWeWorkのヤバイ財務

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巨額の営業損失

約8,000億円の調達の後、さらなる資金調達を目指し、IPOへの準備を進めたWeWorkですが結果は皆様がご存じの通り、失敗に終わりました。このIPOの失敗で明るみに出たのはモラルのない社内文化やCEOによる私的な資金の利用、そしてそれまで公開されることがなかったヤバイ財務状況でした。

巨額の損失が伝えられているものの一体いくらだったのでしょう。いったい何がそんなにヤバかったのでしょうか。ここで上場のために提出された目論見書(Form S-1)を見てみましょう。

OperatingLoss_1

営業損益ベースで見ると2016年から2018年まで3年連続で赤字となっています。問題はその売上に対する規模です。ほぼ売上と同規模の営業損失が出ている。つまり、売上の2倍の費用が発生していることになります。

 

上場を果たしたスタートアップとの比較

スタートアップが上場する場合には、損失があることなんて珍しくもないという意見もあると思いますので、同時期(2018年~2019年)に上場したスタートアップたちの上場直前の売上に対する赤字の規模を見てみましょう。

LossRatio

 

最も損失の売上対比率が大きいLyftでさえ、営業赤字の金額は売上の半分程度です。これを見れば、売上対比100%近い損失を出しながら上場を目指したWeWorkの財務がいかに厳しい状態にあったかがわかるでしょう。

 

キャッシュフローと流動比率

WeWorkの財務の厳しさはそのキャッシュフロー計算書を見るとさらに鮮明になります。2016年・2017年・2018年と投資によるキャッシュフローは当然ながら赤字ですが、最初の2年間は営業キャッシュフローは黒字でした。しかし、2018年には営業キャッシュフローまでもが赤字に陥ります。これは2018年には本業のシェアオフィス事業の営業からも現金を稼ぐことができなくなったことを意味しています。

CF_Statement

 

同時に直近の財務の健全性を表す指標である流動比率も継続して下落を続けます。100%を超えているあたり、1年間は健全性を維持できることを意味しますが、営業キャッシュフローが赤字であることと合わせて考えれば、WeWorkにとってこの時点で借入もしくは出資による資金調達は必須であったと考えられます。

LiquidityRation
 

収益化の計画

しかし、WeWorkにも言い分があります。米国の財務諸表にはManagement Discussion & Analysis (MD&A:経営者による財政状態及び経営成績の検討と分析)と言われる経営層によるビジネス分析のセクションがあり、そこにはWeWorkのビジネスの自己分析が記載されています。

WeWorkの計画ではコワーキングスペースのライフサイクルを5つのステージに分けて管理していました。

 

LifeCycle

 

これらのうち、Runのステージまで成熟した拠点は安定して収益を生むことができるが拠点オープンから24か月程度期間を要すると考えられていて、WeWorkの拠点の中ではこのFill・Runのステージまで成熟した拠点は30%に過ぎず、時間が経過すればより多くの拠点がRunまで成熟し、収益は改善されると考えていました。加えて、拠点を多く展開することで新拠点オープンのコストは下がり、運営のコストも規模の経済を利用することで減少していくと予想していました。

では、その目標は達成されていたのでしょうか。彼らの2016年以降の拠点ごとの運営費用、会員ごとの運営費用を分析してみましょう。残念ながらWeWorkのForm S-1に公開されている財務情報は2016年から2019年第2四半期までであるため、限定的な分析になってしまうが、それでも分析してみる価値はあると思います。

UnitAnalysis
 

上記の分析を見る限り、WeWorkの戦略は確実に遂行されていたように見えます。拠点当たりの運営費用および会員当たりの運営費用は海外展開を含む拠点展開のスピードを加速させた2015年以降2016年から2017年かけて一時的に上昇するもののその後は劇的な改善を見せていることがわかります。2017年から2018年では拠点ごとの運営コスト11.7%減少し、さらに2019年は第2四半期までのデータでありますが前年度比で34.8%も改善しています。会員ごとの運営コストも同様に大きく減少を記録しています。

ここまでの分析を見てどのように感じたでしょうか。WeWorkの財務状態は確かにヤバイ状態にありました。それはIPOを目指す企業として、他の例と比較しても、損失が大きすぎたということが問題であったと言えるでしょう。一方でWeWorkが公表した今後の計画と経営財務の分析を見る限り、コロナウィルス(COVID-19)の影響がなければWeWorkの再建は現実味があったストーリーにも見えます。

ここまで続いてきたWeWorkに関する記事ですが、次回の投稿が最後となります。これまで紹介してきた戦略と現状の分析をまとめ、WeWorkが労働市場にもたらした価値とその失敗から学べるコワーキングスペースとシェアオフィス運営における注意点をまとめ、最後の投稿として締めくくりたいと思います。

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