業務自動化を阻む壁 - 神エクセルの弊害

Stressed businessman with head in hands at office

いきなりですが、デジタル化が進む中で様々なクラウドツールが登場して、世の中に浸透しつつあります。例えば、こんなところでしょうか?

 

  • 会計管理:freee、 MFクラウド会計、弥生会計クラウド
  • 経費精算:Staple、Dr.経費精算、Concur
  • CRM・MA:Salesforce、Marketo、Hubspot、Satori
  • 社内ヘルプサービス管理:ServiceNow、JIRA service desk、ManageEngine ServiceDesk Plus
  • 人事管理:SmartHR、カオナビ、Jinjier
  • 社内コミュニケーション:Slack、Chatwork、Line for Business

 

横文字ばっかりですね。。。こう言ったシステムの導入サポートをコンサルティングでお手伝いしたことは山ほどありますが、導入の過程で必ず言われるセリフがこちらです。

 

「ツールが多すぎて、わからなくなっちゃうよ。エクセルじゃダメなの?」

 

変化に抵抗する中間管理職の常套句ですが、このセリフの後に必ずといっていいほど出てくるのが神エクセルといわれる代物です。

 

神エクセルとは?

神エクセルとは複雑な関数が張り巡らせてあるエクセルファイルのことで大企業の各部署に数人生息するエクセル職人たちが自動化や効率化にお金をかけたくない中間管理職にお願いされたからとりあえず作る複雑なエクセルのことです。実は執筆者は財務畑出身のVBAまでゴリゴリに書いてしまうエクセルの使い手で、神エクセルを幾度も作ったことがありますが、個人的には使用することをお勧めすることはできない代物でした。

では、何がいけないのでしょうか?今日は私が実務で経験した神エクセルの弊害をご紹介したいと思います。

 

1.作成者以外メンテナンスできない

これが最大の問題です。エクセルの作成者というのはプログラマーではないので、その人たちがシートを勝手に複数作成して、色々なセルに自由気ままに書いていく関数の集合である神エクセルはいわゆるクソコードで構成されているのです。

プログラミング言語であれば、その書き方にある程度Convention(コンベンション:伝統)といわれる基礎的なルールが存在しますが、エクセルはビジネス畑の人たちが自由気ままに書いているのでそういったルールがありません。ですので、入り組んだ関数となるとそれを読み解くのに長い時間がかかりますし、個々人の作成方法の癖や隠されたシートや行などがあるともはや解読不能です。

これらの理由から神エクセルは基本的に本人しかメンテナンスできないのです。よく上記のようなツールを導入しようとすると「自分たちでメンテナンスできないから嫌だ。」といわれるのですが、神エクセルも実は自分たちではメンテナンスできないのです。

というわけで神エクセルを作成したエクセル職人は仕事の大半がその使い方の問い合わせになります。

 

2.仕様書が存在しない

普通のシステムであれば、必ずと言っていいほど仕様書が存在します。仕様書とはいくつかのレベルがありますが、システムがどのような機能を満たしていて、どのように動くのか、どのような構成で構築されているのかなどを記した書類です。

神エクセルは個人がなんとなくユーザーたちの声を聞いて自由気ままに作成を始めるので仕様書が存在しない場合がほとんどです。ユーザーたちも自分たちの声に従って作られているので、当面の間は便利なツールとして重宝するのですが、そのうちこれが他社の要望によって作り変えられ、全体像を把握するのが作成者のみとなります。場合によっては作成者も仕様を覚えておらず、動作や機能に質問が来た場合には一つ一つ関数を追いかけて、回答をする必要があるという事態に陥ります。

仕様書があればそれを渡すだけなのですが、それが存在しないため、はじめは便利なツールだったものが段々と業務のボトルネックになり始めます。

 

3.重くて動かない

以前の記事にエクセルは一定量以上のデータを格納すると業務に支障をきたすほどに動きが遅くなるということを記載しましたが、神エクセルを使用するとほとんどの場合がこの現象に直面することになります。

複雑に入り組んだ関数をちりばめてあるのみならず、大量のデータを処理するエクセルは例えば、セルを一つ編集しただけで再計算が行われて10秒程度動かなくなったりすることが頻繁にあります。

10秒程度かと思われる方もいるかもしれませんが、一つ一つの動作で10秒ですから急いで作業をしている方にとっては相当なストレスになります。

 

4.バージョン管理がされていない

最後に厄介なのがバージョン管理です。最初は作業を自動化してくれる便利なツールである神エクセルですが、簡単に編集できるという性質が仇となり、細かい改善要望が頻繁に届くようになります。システムであれば、改修した後にテストをして、このタイミングでリリースしますといったバージョンの管理を一括して行うことができますが、エクセルの場合は「すぐに変更して!」といった要望が多く、バージョンの管理がままなりません。

気が付けば、変更後の仕様と変更前の仕様で特定部分の計算の整合性が取れないとかデータの整合が取れないとかいう現象があちこちで発生し始めます。同時に各部署で使われる場合、勝手にコピーされて変更を加えたものが出回り始め、問い合わせが来ても、「あれ?これは私が作ったものから勝手に変更されている。。。」みたいなことが起こるともう制御ができません。

 

終わりに

どう感じたでしょうか?共感できる人はかなりのエクセルの使い手のはずです。

忘れないでほしいのは、エクセルは少しの作業の自動化や計算分析には驚異的な力を発揮します。

一方で一番最初に上げたようなクラウドツールの数々を代替するようなモノではないということも理解してほしいのです。複雑なエクセルなどは会社全体の業務システムを考えた場合非効率を生じさせることも多く、EUC(End User Computing:エンドユーザーコンピューティング)を禁止する企業も増えてきています。

筆者は様々な企業でプロセスの自動化に挑戦しましたが、エクセルが存在するだけでデータのフローが止まってしまい、自動化が難しくなります。このエクセルが神エクセルで業務の重要な部分を処理していればいるほど取り除くことが難しくなります。今ではSSO(Single Sign On)も可能ですし、ツールの数が増えることに問題を感じたことはありませんので、ぜひ、ツールを使いこなして業務のデジタル化を実現してほしいです。